国内初!コロナワクチン接種後の副反応でアナフィラキシー!起こりやすい人は?症状は?

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厚生労働省は、2021年3月5日、医療従事者の30代女性がコロナワクチン接種後にアナフィラキシーを起こしたと発表しました。日本のコロナワクチン接種での報告は初となります。

日本アレルギー学会の『アナフィラキシーガイドライン』によると、アナフィラキシーとは「アレルゲン等の侵入により、複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され、生命に危機を与える過敏反応」です。そのうち、血圧低下や意識障害を伴うものをアナフィラキシーショックといいます。

今回の事例は、上記ガイドラインの定義の「アナフィラキシー」に該当します。

過去に紹介した内容を含め、コロナワクチンによるアナフィラキシーの報告状況とアナフィラキシー反応の症状について日本アレルギー学会のアナフィラキシーガイドラインをもとに紹介します。

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厚生労働省の発表情報

厚生労働省のホームページにある報道発表資料に今回の事例について記載がありました。(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_17212.html)一部の内容は、新聞の報道から引用しています。

【事例】
接種者は30歳代の女性で基礎疾患として喘息、甲状腺機能低下症、副甲状腺機能低下症がある方。
接種日は2021年3月5日で接種5分以内に咳がみられ、その後、呼吸が早い、まぶたの腫れ、全身のかゆみ等の症状がみられた。その後の治療としてアドレナリンの投与後、症状は改善した。

【接種されたワクチン】
ファイザー株式会社「コミナティ筋注」 ロット番号:EP2163

【ワクチン接種との因果関係】
(報告者の評価)報告者は、関連ありと報告。(他要因の可能性の有無:有(喘息))

【専門家の意見】
○岡明 薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会長
「基礎疾患として喘息のある方が、 ワクチン接種後5分以内に咳などの呼吸器症状が出現し、
また全身のかゆみやまぶたの腫れなどの症状も認めたことからアナフィラキシーと診断されている。適切な治療で症状は軽快をしたものと考えられる。
 本ワクチンを含めどのワクチンにもアナフィラキシーをおこす可能性はあり、
接種後少なくとも15分以上の観察期間の周知と、アナフィラキシーによる症状が疑われた場合の適切な対応が重要と思われる。詳細な情報を収集し今後の審議会で評価をしていく必要がある。」

ファイザーのコロナワクチン接種によるアナフィラキシー報告

以前紹介した内容を再掲載します。

「ファイザ―新型コロナワクチンの適正使用について」に急性期のアレルギー反応について記載があります。

2020年12月14日~23日の間に、ワクチン有害事象報告システムによる監視により、本剤の1,893,360回の1回目接種後に21例のアナフィラキシーが検出されました(100万回あたり11.1例)。これらの71%はワクチン接種から15分以内に発生しました。

アナフィラキシーが発生した21例の特徴は次の通りです。

  • ・年齢:27歳から60歳 中央値40歳
  • ・女性:19名(90%)
  • ・発症までの分数、中央値(範囲):13分(2分から150分)
  • ・15分以内の発症 :15名(71%)
  • ・30分以内の発症 :18名(86%)
  • ・アレルギーまたはアレルギー反応の既往歴が文書で確認できる:17名(81%)
    • 17名のうち、アナフィラキシーの既往歴:7名

非アナフィラキシーアレルギー反応を呈した83例の特徴は次の通りです。

  • ・年齢:18歳から65歳 中央値43歳
  • ・女性:75名(90%)
  • ・発症までの分数、中央値(範囲):12分(1分未満から200分 中央値20時間)
  • ・15分以内の発症 :44名(61%)
  • ・30分以内の発症 :61名(85%)
  • ・アレルギーまたはアレルギー反応の既往歴が文書で確認できる:56名(67%)

これらの情報より、アナフィラキシーおよび非アナフィラキシーアレルギー反応の起こった人の特徴から、女性のほうが多く発症し、過去にアレルギー反応があった人に起こったケースが80%ほどあるとのことです。接種から30分以内の発症は85%で、接種会場で30分待つことで、急性のアレルギー反応にほぼ対処できると思われます。

今回の発生事例では、女性で接種後5分で症状が発症しています。食物アレルギーについて記載がなかったので、過去にアレルギーがあった方ではないようです。

アナフィラキシーについて

一般社団法人 日本アレルギー学会の発行している『アナフィラキシーガイドライン』(https://anaphylaxis-guideline.jp/pdf/anaphylaxis_guideline.PDF)にアナフィラキシーの定義と診断基準や治療について記載されています。

アナフィラキシーの定義と診断基準

アナフィラキシーとは、「アレルゲン等の侵入により、複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され、生命に危機を与える過敏反応」です。「アナフィラキシーに血圧低下や意識障害を伴う場合」をアナフィラキシーショックといいます。

【診断基準】以下の3項目のうち、いずれかに該当すれば、アナフィラキシーと診断されます。

  1. 皮膚症状(全身の発疹、瘙痒〔かゆみ〕または紅潮〔赤くなる〕)、または粘膜症状(口唇・舌・口蓋垂の腫脹〔腫れ、むくみ〕など)のいずれかが存在し、急速に(数分~数時間以内)発現する症状で、かつ下記a.bの少なくとも1つを伴う。
    • a:呼吸器症状(呼吸困難〔息苦しい〕、気道狭窄、喘鳴、低酸素症)
    • b:循環器症状(血圧低下、意識障害)
  2. 一般的にアレルゲンとなりうるものへの曝露の後、急速に(数分~数時間以内)発現する以下の症状のうち、2つ以上を伴う。
    • 皮膚・粘膜症状(全身の発疹、瘙痒、紅潮、浮腫)
    • 呼吸器症状(呼吸困難、気道狭窄、喘鳴、低酸素症)
    • 循環器症状(血圧低下、意識障害)
    • 持続する消化器症状(腹部疝痛〔さしこむ痛み〕、嘔吐)
  3. 当該患者におけるアレルゲンへの曝露後急速な(数分~数時間以内)血圧低下
    • 収縮期血圧低下の定義:平常時血圧の70%未満または下記
      • 生後1か月~11か月:70mmHg未満
      • 1~10歳     :70mmHg+(2×年齢)
      • 11歳~成人    :90mmHg以下

アナフィラキシーと間違われる疾患と鑑別ポイント

アナフィラキシーに間違われる疾患として、喘息、不安発作、パニック発作、失神等があります。共通する症状はありますが、共通しない症状が発生したらアナフィラキシーの可能性があります。

  • 喘息では、蕁麻疹や痒み、血管浮腫や血圧低下が生じません。
  • 不安発作、パニック発作では、蕁麻疹や血管浮腫、喘鳴、血圧低下が生じません。
  • また失神の場合は、蕁麻疹、皮膚紅潮、呼吸器症状、消化器症状がありません。

アナフィラキシーの疫学

平成25年の文部科学省の『学校生活における健康管理に関する調査』によると、日本において、アナフィラキシーになったことがある児童生徒の割合は、小学生0.6%、中学生0.4%、高校生0.3%だそうです。

アナフィラキシーの機序

アナフィラキシーの多くは体内の免疫グロブリンの一種であるIgEが関与する免疫学的機序により発生し、最も多くみられる誘因は、食物、ハチや蟻の毒、薬剤です。

アナフィラキシーの危険因子、増悪因子

喘息、特にコントロール不良例の場合は、アナフィラキシーの重篤化の危険因子なので、そのコントロールを十分に行う、とあります。

アナフィラキシーの治療にアドレナリンを使用しない場合は死亡のリスクを高める、とあります。

アナフィラキシーの症状

アナフィラキシーが発症する臓器は多種にわたり、通常、症状は、皮膚・粘膜、上気道・下気道、消化器、心血管系、中枢神経系の中の二つ以上の器官系に生じます。

皮膚および粘膜症状はアナフィラキシー患者の80%~90%、気道症状は最大70%、消化器症状は最大45%、新血管系症状は最大45%、中枢神経症状は最大15%に発現する、と報告されています。(Simons FE. J Allergy Clin Immunol 2010; 125;S161-81.)

発症初期には、進行の速さや最終的な重症度の予測が困難であり、数分で死に至ることもあるそうです。致死的反応において呼吸停止または心停止までの中央値は、薬物5分、ハチ15分、食物30分との報告がある。蘇生に成功しても重篤な低酸素脳症を残すことがあるそうです。(Pumphrey RS. Clin Exp Allergy 20000; 30: 1144-50)

アナフィラキシーの治療の初期対応

アナフィラキシー発症時には体位変換をきっかけに急変する可能性があるため、急に座ったり立ち上がったりする動作はしないようにします。原則として仰向けにし、30cm程度下肢をあげます。嘔吐の場合は顔を横向ける、呼吸が速い場合には、楽な体位にし、下肢を上げます。病院の場合は院内で蘇生チームの応援を呼び、地域の場合は救急を呼びます。

アナフィラキシーの薬物治療

アナフィラキシーの薬物治療として、アドレナリンの筋肉注射があります。医療機関では救急カートにアドレナリンが常備されていて、医師の指示で投与します。

過去にアナフィラキシーが起こったことがある人に処方される薬として、エピペン®注射液(0.15mg、0.3mgの2製剤)があります。これはアナフィラキシーショック時に自分で投与するためのペン型製剤です。体重に合わせて0.3mg製剤もしくは0.15㎎製剤を大腿部の前外側から注射します。緊急時は衣服の上から投与できます。        

  • 【効能・効果】
  • 蜂毒に起因するアナフィラキシー反応、食物に起因するアナフィラキシー反応及び薬物に起因するアナフィラキシー反応等のアナフィラキシー反応に対する補助治療(アナフィラキシーの既往のある人又はアナフィラキシーを発現する危険性の高い人に限る)。
  • 【用法・用量】
  • アドレナリンとして0.01mg/kgが推奨用量であり、患者の体重を考慮して、アドレナリン0.15mg又は0.3mgを筋肉内注射する。

今回の事例とガイドライン情報から読み取れること

コロナワクチンを接種後アナフィラキシーを起こした方は基礎疾患として喘息がありました。

アナフィラキシーの危険因子として喘息(特にコントロール不良例)があげられてます。厚労省の発表資料からは食物アレルギー等の既往がみられませんので、この方に関していえば、喘息がアナフィラキシーの誘発要因だったのかもしれません。

コロナワクチンの接種会場では30分間様子をみる必要があります。待機場所もよういされているので、もしアナフィラキシーが起こってもすぐに対処してもらえます。

あまり不安がらずに接種に望まれるといいと思います。

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