新型コロナワクチン接種 うける? うけない?ファイザー製のmRNAワクチンの情報を薬剤師目線で紹介!

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新型コロナウイルスのワクチンが承認されますね。

医療従事者には2月中旬から先行接種が始まります。実は、私も先行接種の対象です。

今回承認されたのはファイザー社製の『mRNAワクチン』です。

『mRNAワクチン』は日本で初めて使用されるタイプのワクチンです。

承認までに日本人に使用したのは、わずか160人です。

そのため、厚生労働省が主体の調査として、ワクチンの効果や副反応の情報を約2万人の医療従事者で集めようとしています。

夫から「mRNAワクチンって何?」と聞かれたので、今回承認されるワクチンについて、自分が接種する前に薬剤師目線で調べてみました。

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ワクチンってどんな種類があるの?

 これまで日本で使用されているワクチンは、おおきく分けると『生ワクチン』『不活化ワクチン』『組換えタンパクワクチン』に分類されます。『生ワクチン』とは、生存能力を損なうことなくウイルスや細菌の病原性を低下させて作ったワクチンで、弱毒化したウイルスを接種します。麻しん・風しん(MR)ワクチンや水痘ワクチンが該当します。一方、『不活化ワクチン』や『組換えタンパクワクチン』はウイルスの一部(病原性のないタンパクなど)やそれを人工的に作成したものを接種します。いずれのワクチンも、接種したワクチンに対して人体が免疫反応を起こし、ウイルスをやっつける抗体を作るしくみを誘導するものです。

 今回のファイザー社製の新型コロナウイルスワクチンは『m(メッセンジャー)RNAワクチン』です。同じような分類のワクチンとして、『DNAワクチン』『ウイルスベクターワクチン』があります。これらのワクチンはウイルスを構成する遺伝情報(mRNA,DNA,ウイルスベクター)を投与することで、その情報をもとに、体内でウイルスのタンパクが作られます。それに対して抗体を作り、免疫を獲得します。

mRNAワクチンって何?

 まず、mRNAとは何か、というところから説明します。

ひとの体内では、遺伝子情報(DNA)が核内に収まっています。

必要なタンパク質を作るため、DNAの鎖がほぐれ、mRNAのもと(mRNA前駆体)がその情報をコピーします。これを「転写」といいます。

DNAは遺伝子情報がたくさん詰まったものですが、すべてが大事な情報ではなく、ところどころに不要なものがあります。そのため、mRNA前駆体はそのままではタンパク質の設計図になりません。ここから不要な部分を切り取って生成されたものが、mRNAとなります。mRNAはタンパク質を作るための完成版の設計図といえます。

mRNAは核の外に出てリボソーム(タンパク質をつくる細胞内の工場)によって翻訳され、タンパク質が合成されます。

 『mRNAワクチン』はウイルスの構成タンパクの遺伝情報をmRNAで作成したワクチンです。mRNAにウイルスの表面タンパク質の情報があり、その情報をリボソームで翻訳することでウイルスタンパク質の一部が体内で作られます。そのウイルスタンパク質に対して免疫反応が起こって、ウイルスをやっつける力を獲得します。

 『mRNAワクチン』はウイルスのRNAそのものではありません。ウイルスのタンパク質の設計図です。そのため、体内でウイルスそのものが作られるわけではなく、またmRNAが人の遺伝子に組み込まれる心配はありません。

ファイザー社製mRNAワクチンの臨床試験情報

 ファイザー社製mRNAワクチンの承認申請に用いられた、国際共同第3相試験(世界中の人に対して、ワクチンの実薬とワクチンの偽薬を接種したデータを収集した試験)の臨床データはファイザー社のプレスリリース『ファイザーとBioNaTech、日本においてCOVID-19ワクチンの製造販売承認申請を発表(2020年12月18日)』の「The New England Journal of Medicine」のリンクから、確認できます。そこから読み取った情報を紹介します。

 ワクチンの実薬と偽薬を1:1の割合で16歳以上の約44,000人に投与され、そのうち2か月間の経過を確認できたのは37,706名です。女性と男性の比率はほぼ1:1です。アジア人は約1,600名に接種されています。参加者の中央値年齢は52歳で、参加者の42%が55歳以上でした。

 ワクチンは1回目に30㎍を接種し、21日後に同量を接種します(二回接種)。

ワクチンの効果

 臨床試験の参加者のうち、新型コロナウイルス感染した証拠が確認されなかった方36,523名のうち、2回目の投与後、少なくとも7日後に発症した参加者は実薬群で8例、プラセボ群で162例であり、有効性は95%に相当しました。また、過去に感染した参加者を含めた場合、2回目投与後少なくとも7日後に発症した参加者は実薬群で9例、プラセボ群で169例であり、有効性は94.6%に相当しました。

 ワクチンの有効性について、年齢、性別、人種、民族性、肥満の有無での比較では、全体で観察されたものと一般的に一致していました。

ワクチンの副反応(局所反応)

 ワクチン接種後の副反応として、実薬投与群の参加者はプラセボ投与群の参加者と比較して多くの局所反応がありました。最も一般的に報告された局所反応は、注射後7日以内に注射部位で軽度から中等度の痛みです。16歳から55歳までの参加者では初回投与後に83%、2回目投与後に78%、55歳以上の参加者では初回投与後の71%、2回目接種後に66%の発生報告がありました。

 赤味と腫れの副反応は全参加者でほぼ軽度の症状で5~7%の発生報告があり、1回目と2回目に大きな差はみられませんでした。

一般に局所反応は重症度が軽度から中等度であり、1~2日以内に回復しました。

ワクチンの副反応(全身反応)

 ワクチン接種後の全身反応は16歳から55歳までと55歳以上で比較すると、16歳から55歳までに多く、また初回接種より2回目接種時に多く報告されました。最も多く報告された全身症状は疲労(2回目接種時、55歳までで59%、55歳以上で51%)と頭痛(55歳までで52%、55歳以上で39%)です。ただ、プラセボ投与群の参加者でも疲労(17%)と頭痛(14%)が報告されました。

 38度以上の発熱の副反応は16歳から55歳までの参加者では初回投与後は4%、2回目投与後に16%、55歳以上の参加者では初回投与後は1%、2回目投与後は11%の発生報告がありました。発熱や悪寒などの全身症状はワクチン接種後1~2日以内に観察され、その後まもなく回復しました。

ワクチン臨床研究情報 まとめ

 ワクチンを接種した群とプラセボ群の2回目接種7日後の新型コロナウイルスへの感染者数は、ワクチン群が9名、プラセボ群が169名とかなり差があり、有効性が高いことが読み取れます。

 ワクチンの副反応としては、主に局所反応としては痛みで、疲労や頭痛の発生もありますが、プラセボ群でも見られたため、ワクチン成分以外の影響も考えられます。また、2回目接種後に38度以上の発熱した方が16%いるというのは、かなり高い確率だと思います。

 以上の情報からは、ワクチンの有効性(ただし2回目接種7日目まで)は95%と高く、接種することのメリットは大きいが、副反応についても接種部位の痛み、疲労、頭痛、発熱への注意が必要な気がします。

日本人の接種データについて

 これまで紹介した国際共同第3相試験のデータのほかに、国内第1/2相試験日本人160名(20歳~85歳、実薬:プラセボ=3:1)について、安全性、忍容性、免疫原性の評価が行われています。こちらのデータも承認申請に使用されます。

 今後、承認された後に先行接種で医療従事者約2万人の接種情報が厚生労働省主体の調査が行われます。先行接種は2月中旬から開始されるので、優先接種が行われる4月頃までに、日本人の情報が多く集まるため、今後ワクチンを接種するかどうかの判断材料になりそうです。

まとめ

 現時点では短期間の有効性しかわかりませんが、有効性の高いワクチンであり、普通のワクチン接種よりも接種部位の痛み、疲労、頭痛、発熱に注意が必要なようです。

 新型コロナウイルスに自然に感染するのを待つか、ワクチン接種を受けて感染リスクを下げるか。私自身はこの情報からは接種をうけようと思います。

 

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