デルタ株?インド型??新型コロナの変異株の呼び方が地域名からギリシャ文字に。何がどう変わったか調べてみました。

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新型コロナ関連のニュースを見ていると、6月以降、「デルタ株(インド型)」という表記を見るようになりました。それまで、イギリス型、インド型など地域名で変異株を示していたものが、ある日から別の呼び方をするようになったようです。

知り合いに「デルタ株はインド株のパワーアップ版」などと言われて、腑に落ちず、本当かどうかよくわからなかったので、新型コロナの呼び方が変更となったことについて調べてみました。

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新型コロナウイルス変異株の命名方法変更

2021年5月31日、世界保健機関(WHO)は新型コロナウイルスの変異株の命名システムを発表しました。WHOのサイト(https://www.who.int/news/item/31-05-2021-who-announces-simple-easy-to-say-labels-for-sars-cov-2-variants-of-interest-and-concern)に掲載されている文書は次の通りです(DeepL翻訳使用)。

WHO announces simple, easy-to-say labels for SARS-CoV-2 Variants of Interest and Concern
WHO、「SARS-CoV-2 Variants of Interest and Concern」のシンプルで言いやすいラベルを発表

WHO has assigned simple, easy to say and remember labels for key variants of SARS-CoV-2, the virus that causes COVID-19, using letters of the Greek alphabet.
WHOは、COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2の主要なバリアントに対して、ギリシャ語のアルファベットを用いた、シンプルで言いやすく、覚えやすいラベルを割り当てました。
These labels were chosen after wide consultation and a review of many potential naming systems. WHO convened an expert group of partners from around the world to do so, including experts who are part of existing naming systems, nomenclature and virus taxonomic experts, researchers and national authorities.
これらのラベルは、幅広い協議を経て、多くのネーミングシステムの候補を検討した結果、選ばれました。WHOはそのために、既存の命名システムに属する専門家、命名法やウイルス分類学の専門家、研究者、各国当局など、世界中のパートナーからなる専門家グループを招集しました。
WHO will assign labels for those variants that are designated as Variants of Interest or Variants of Concern by WHO. These will be posted on the WHO website.
WHOは、WHOが「Variants of Interest(関心のある変種)」または「Variants of Concern(懸念のある変種)」と指定した変種にラベルを割り当てます。これらは、WHOのウェブサイトに掲載されます。
These labels do not replace existing scientific names (e.g. those assigned by GISAID, Nextstrain and Pango), which convey important scientific information and will continue to be used in research.
これらのラベルは、重要な科学的情報を伝える既存の科学的名称(GISAID、Nextstrain、Pangoによって割り当てられたものなど)に取って代わるものではなく、今後も研究に使用されていきます。
While they have their advantages, these scientific names can be difficult to say and recall, and are prone to misreporting. As a result, people often resort to calling variants by the places where they are detected, which is stigmatizing and discriminatory. To avoid this and to simplify public communications, WHO encourages national authorities, media outlets and others to adopt these new labels.
これらの学名は、重要な科学的情報を伝えるものであり、今後も研究に使用される予定です。その結果、人々はしばしば、変種を検出された場所で呼ぶことになりますが、これは汚名を着せられ、差別的な行為です。このような事態を避け、広報活動を簡素化するために、WHOは各国当局やメディアなどにこの新しいラベルを採用することを推奨しています。

WHO Webサイト(WHO announces simple, easy-to-say labels for SARS-CoV-2 Variants of Interest and Concern)より引用

上記より、WHOが関心のある変異種(Variants of Interest:VOI)と懸念のある変異種(Variants of Concern:VOC)について、指定した変異種に対して、ギリシャ語のアルファベットを用いた呼び方に変更する、ということのようです。つまり、変異種すべてに名前を付けるのではなく、関心のある変異種、懸念のある変異種にのみ、ギリシャ語のアルファベットで命名されるようですね。

この変更について、新型コロナウイルスの変異株につけられた学名が、変異を検出された場所で呼ぶことは、その国の汚名となり、差別的行為であるため、各国メディアにも新しい命名法の呼び方を使用するように推奨する、とあります。

ここで、最近のニュースが新しい呼び方になった理由がわかりました。ただ、急に変わると何のことかわからないので「デルタ株(インド型)」という感じで従来の呼び方を併記しているのかなと思いました。

ギリシャ語のアルファベット

Image by Robert C from Pixabay

ところで、ギリシャ語のアルファベットとはどのようなものでしょうか。

通常、アルファベットといえばA、B、C…ですが、ギリシャ語の場合はアルファ(α)、ベータ(β)、ガンマ(γ)…となります。よく医学系の分類ではα受容体、β受容体など、よくでてくるので、そんなに違和感はありません。

ギリシャ語のアルファベットと読み方の一覧は次の通りです。

ギリシャ語のアルファベット一覧

こうやってみると、Excelやらゲームやらでよく見かけるものもありますね。

変異株の一覧

WHOのサイト(https://www.who.int/en/activities/tracking-SARS-CoV-2-variants/)の、「Tracking SARS-CoV-2 variants(SARS-CoV-2の亜種の追跡)」という記事に新型コロナウイルスの変異株の新名称と種類について掲載されています。

WHOの定義では、次の2つの変異種定義があります。

  • 懸念される変異株(Variants of Concern:VOC
  • 注目すべき変異株(Variants of Interest:VOI

懸念される変異株(VOC)

懸念される変異株(VOC)とは、次の定義を満たし、比較評価により、世界的に公衆衛生上重要な程度の以下の変化のうち1つ以上に関連することが実証されたSARS-CoV-2の変異株を指します。

  • Increase in transmissibility or detrimental change in COVID-19 epidemiology; or
  • (伝達性の増加またはCOVID-19の疫学における有害な変化、または)
  • Increase in virulence or change in clinical disease presentation; or
  • (毒性の増加または疾患の臨床像の変化、または)
  • Decrease in effectiveness of public health and social measures or available diagnostics,vaccines, therapeutics.
  • (毒性の増加または疾患の臨床像の変化、または公衆衛生や社会的対策、または利用可能な診断法、ワクチン、治療法の効果の低下。)

厚生労働省の資料(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000776469.pdf)には、「主に感染性や重篤度が増す・ワクチン効果を弱めるなど性質が変化した可能性のある株」とあります。

WHOと厚生労働省の資料を参照して作成したVOCの一覧は次の通りです。なお、WHOと日本の国立感染症研究所のVOCとVOIの分類は一部異なっています。

WHOのホームページに掲載されているVOC
厚生労働省資料「新型コロナウイルス感染症(変異株)への対応」よりVOC一覧からWHOのVOCに該当するものを抜粋

注目すべき変異株(VOI)

注目すべき変異株(VOI)とは、SARS-CoV-2の分離株は、基準となる分離株と比較して、そのゲノムに表現型への影響が確立されている、または疑われている変異があり、以下のいずれかに該当する場合は、注目すべき変異株となります。

  • has been identified to cause community transmission/multiple COVID-19 cases/clusters, or has been detected in multiple countries; OR
  • (地域社会での感染/複数のCOVID-19症例/クラスターの原因となっていることが確認されている、または複数の国で検出されている、または)  
  • is otherwise assessed to be a VOI by WHO in consultation with the WHO SARS-CoV-2 Virus Evolution Working Group. 
  • (WHO SARS-CoV-2ウイルス進化作業部会との協議により、WHOがVOIと評価したもの。)

前述の厚生労働省の資料には、「主に感染性や重篤度・ワクチン効果などに影響を与える可能性が示唆される株」とあります。

WHOの資料を参照して作成したVOIの一覧は次の通りです。

WHOのVOI一覧

まとめ

新型コロナウイルスの変異株について、2021年5月31日に発表されたWHOの名称ラベルによって、昨今の報道での呼び方が変わったようです。イギリス型と言われていたものはアルファ株となり、インド型と言われていたものはデルタ株と呼び名が変更となっています。

途中で呼び名が変わると色々混乱しますが、経過がわかるとなるほどと思いました。

また、すべての変異株が命名されるわけではなく、VOC(懸念される変異株)、VOI(注目すべき変異株)に該当するものがギリシャ語のアルファベットがあてはめられるようなので、今後も注目していきたいと思います。

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