ファイザー社製mRNAワクチンの医療従事者対象の先行接種が開始されました。
ワクチンは今回特別承認で使用が許可されており、長期的な効果や副反応の情報は十分収集されていません。
先行接種の対象者4万名のうち、2万名のデータを早期に収集することで、その後の接種対象者の接種判断の情報に活用されることが期待されています。
今回、先行接種対象者としてワクチンを接種したので、その内容を紹介します。
ファイザー製のワクチンは2回接種が必要です。2回目は3週間後に接種します。
1回目のワクチン接種後の副反応についても紹介します。
ワクチンの調製
ワクチンは―80℃の超低温冷凍庫(ディープフリーザー)に保管されています。
ワクチンを使用する際、ディープフリーザーから通常の冷蔵庫(2~8℃)に移すと、3時間以内に解凍されます。
解凍されたワクチン1本に対し、整理食塩液を1.8mL入れて希釈します。
希釈したワクチンの使用期限は、希釈後2~30℃で6時間です。
もともとワクチンには0.45mL入っており、合計2.25mLとなります。
ひとり当たりの接種量は0.3mLで、6人分だと1.8mLとなり、理論上は余りますが、実際は注射筒(シリンジ)や注射針のデットスペースに残るので、デットスペースの少ない特殊なシリンジと針を使用しないと、6人分を準備することは難しいです。
先行接種の対象病院に搬入されているシリンジと針は6人分のワクチンがとれるものであり、接種人数はは6人単位となります。
ワクチンの接種の接種不適当者と接種要注意者
ワクチンの予診票には当日の体温を記載する欄があります。
体温が37.5℃以上であった場合は接種は延期となります。
ワクチンの接種対象は16歳以上のため、16歳未満は接種対象外です。
ファイザー社の「新型コロナワクチンの適正使用について」に下記記載があります。
次の人は接種不適当者(予防接種を受けることが適当でない者)となります。
- 明らかな発熱を呈している者
- 重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな者
- ファイザー製mRNAワクチンの成分に対し重度の過敏症の既往歴のある者
- アナフィラキシー
- 全身性の皮膚・粘膜症状、喘鳴、呼吸困難、頻脈、血圧低下等のアナフィラキシーを疑わせる複数の症状
- 予防接種を行うことが不適当な状態にある者
今回のワクチンには鶏卵や安定剤のゼラチン、防腐剤のチメロサール、容器にラテックスが使用されていませんので、上記のアレルギーのある人も接種が可能です。ただし、ポリエチレングリコール(PEG)が含まれているため、これに対するアレルギーがある人は注意が必要です。
PEGは浸透圧性下剤の主要な成分であり、結腸内視鏡検査の前処置、多くの医薬品の不活性成分や安定剤、薬剤(化学療法を含む)の治療効果を改善するためのペグ化とよばれるプロセスで用いられます。さらにPDGとポリソルベート(いくつかのワクチンや治療薬の安定剤に用いられている)には交差反応性が認められています。
次の人は接種要注意者(接種の判断を行うに際し、注意を要する者)となります。
- ・抗凝固療法を受けている者、血小板減少症または凝固障害を有する者
- ・過去に免疫不全の診断がなされている者および近親者に先天性免疫不全症の者がいる者
- ・心臓血管系疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、血液疾患、発育障害等の基礎疾患を有する者
- ・予防接種で接種後2日以内に発熱の見られた者および全身性発疹等のアレルギーを疑う症状を呈したことがある者
- ・過去にけいれんの既往がある者
- ・本剤の成分に対して、アレルギーを呈するおそれのある者
接種不適当者は接種を受けることができません。接種要注意者は問診時の医師の判断になります。
妊娠または妊娠している可能性のある女性には予防接種上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ接種となります。
ちなみに私の婦人科の先生は「問題ないと思う」と言われました。ここは先生で判断が分かれると思います。
授乳中の場合は授乳の継続または中止を検討してください。ヒト母乳中への移行は不明です。とあります。これも婦人科や小児科の先生の判断を仰いだ方がよさそうです。
ワクチンの接種部位
ファイザー製のmRNAワクチン「コミナティ筋中」はその名の通り、筋肉注射のワクチンです。
ワクチンは上腕の「三角筋」というところに接種します。
「三角筋」は肩関節の上方に位置する筋肉で、上肢で物を持ち上げる動作でよく使われます。
ほとんど上腕を露出しないと接種できないため、着込みすぎに注意が必要です。
袖をまくれる服で接種会場に行く方がよさそうです。
ワクチン接種後
ワクチンを接種後、接種会場で30分待機します。これは副反応のうち、早期に発生するアナフィラキシーおよび非アナフィラキシーアレルギー反応の有無を確認するためです。
「ファイザ―新型コロナワクチンの適正使用について」に急性期のアレルギー反応について記載があります。
2020年12月14日~23日の間に、ワクチン有害事象報告システムによる監視により、本剤の1,893,360回の1回目接種後に21例のアナフィラキシーが検出されました(100万回あたり11.1例)。これらの71%はワクチン接種から15分以内に発生しました。
アナフィラキシーが発生した21例の特徴は次の通りです。
- ・年齢:27歳から60歳 中央値40歳
- ・女性:19名(90%)
- ・発症までの分数、中央値(範囲):13分(2分から150分)
- ・15分以内の発症 :15名(71%)
- ・30分以内の発症 :18名(86%)
- ・アレルギーまたはアレルギー反応の既往歴が文書で確認できる:17名(81%)
- 17名のうち、アナフィラキシーの既往歴:7名
非アナフィラキシーアレルギー反応を呈した83例の特徴は次の通りです。
- ・年齢:18歳から65歳 中央値43歳
- ・女性:75名(90%)
- ・発症までの分数、中央値(範囲):12分(1分未満から200分 中央値20時間)
- ・15分以内の発症 :44名(61%)
- ・30分以内の発症 :61名(85%)
- ・アレルギーまたはアレルギー反応の既往歴が文書で確認できる:56名(67%)
これらの情報より、アナフィラキシーおよび非アナフィラキシーアレルギー反応の起こった人の特徴から、女性の方が多く発症し、過去にアレルギー反応があった方に起こったケースが80%ほどあるとのことです。
接種から30分以内の発症は85%で、接種会場で30分待つことで、急性のアレルギー反応にほぼ対処できると思われます。
実際のワクチン接種後の副反応観察
医療機関で同日に接種した30名でアナフィラキシー反応やアレルギー反応を示した人はいませんでした。
接種時の筋注はそれほど痛みを感じませんでした。
接種2日後に腕を上げたときに軽度(日常生活に支障をきたさない)の痛みがありました。これは三角筋に筋注したので、その局所反応と思われます。
接種3日後は軽度の痛みも消失し、何も副反応はありません。
2回目接種後の副反応は発熱注意
約3週間後に2回目接種をうけますが、発熱の副反応は1回目より2回目接種時に起こる可能性が高いようです。
今回は軽度の痛みのみで済みました。
2回目接種後も副反応について紹介したいと思います。
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