医師と一部の人のコロナ重症度イメージが違う!?ネットで注目されたコロナ症状イメージイラストから日米のコロナ重症度分類を調べてみました。

くすり関連
https://twitter.com/kosuke_yasukawa

先日ネット記事であるイラストを発見しました。米ジョージタウン大学内科助教で米国内科専門医の安川康介さんのつくったイラストで、拡散可能とありましたのでご紹介します。

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新型コロナ感染症イメージの医師・一部の人とのギャップ

https://twitter.com/kosuke_yasukawa

こちらのイラストは安川康介教授のツイッターで公開されています。ツイッターには次のように紹介されています。

「若者は重症化しないからワクチンは必要ない」と言う人がいます。日本の「重症」の定義は人工呼吸器や集中治療が必要な状態です。30代、40代でも中等症になる方はそれなりにいて、僕も多く診てきました。軽症や中等症といってもピンとこない方もいるので、スライドを作ってみました。

ちなみに日本の「重症」は、アメリカの「重症」よりも重症です。詳細は以前のツイートを読んでみてください。

(以下、別ツイート)

日本のコロナの重症患者数は少ないと感じる人がいるかもしれません。知ってもらいたいのは、日本の「重症」は、アメリカの「重症」よりも、もっと重症だということです。国により重症の定義が異なります。例えば、東京都の「重症」は、呼吸器/ECMOが必要と、アメリカの「重篤(critical)」に近いです。

CDCのsevere illnessの定義は、酸素飽和度<94%、呼吸数>30回/分などがある場合で、集中治療室入室/人工呼吸器使用がなくてもsevereとなります。severeとcriticalをどのように訳すかも問題で、コロナの報道に関して「重症」がどのように定義されているかは要注意です。

https://twitter.com/kosuke_yasukawa

恥ずかしながら、コロナ治療の現場に携わっていないため、コロナの重症度についてはあまり詳しく認識していませんでした。コロナの重症度分類が国によって異なることを初めて知りました。

日本の重症度分類とアメリカの重症度分類を比較していみたいと思います。

日本の重症度分類

日本の重症度分類は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第5.2版(https://www.mhlw.go.jp/content/000815065.pdf)」 に掲載されています。

厚生労働省「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第5.2版」より引用

この表に次の注釈が記載されています。

  • COVID-19 で死亡する症例は,呼吸不全が多いために重症度は呼吸器症状(特に呼吸困難)と酸素化を中心に分類した.
  • SpO2 を測定し酸素化の状態を客観的に判断することが望ましい.
  • 呼吸不全の定義は PaO2 ≦ 60 mmHg であり SpO2 ≦ 90% に相当するが,SpO2 は 3% の誤差が予測されるので SpO2 ≦ 93% とした.
  • 肺炎の有無を把握するために,院内感染対策を行い,可能な範囲で胸部 CT を撮影することが望ましい.
  • 酸素飽和度と臨床状態で重症度に差がある場合,高い方に分類する.
  • 重症の定義は厚生労働省の通知に従った.ここに示す重症度は中国や米国 NIH の重症度とは異なっていることに留意すること.

日本の重症度分類は呼吸器症状(特に呼吸器症状)にて分類されています。酸素飽和度のみで重症度を判断すると次の通りです。

  • 軽症  :     SpO2 ≧ 96%
  • 中等症Ⅰ93% < SpO2 <96% 
  • 中等症Ⅱ:     SpO2 ≦ 93%

日本の重症度分類では、酸素飽和度(SpO2)が93以下だと中等症Ⅱ、そのうち人呼吸器が必要な状態が重症となりるようです。

アメリカの重症度分類

アメリカの国立衛生研究所(NIH)ではCOVID-19の重症度基準を次のように記載しています。下表はCDC(米国疾患予防管理センター)のホームページに記載されていた内容を日本語訳したものです。

日本の重症度分類での酸素飽和度のみで比較すると、アメリカの中等症日本の中等症Ⅰアメリカの重症日本の中等症Ⅱ相当と思われます。安川教授によると、アメリカの重篤に当たる分類日本の重症の分類に近いとあります。

上記から国によって定義が異なると「日本はアメリカより重症の患者が少ない」といわれても、そのまま鵜呑みにできないことが分かります。

新型コロナウイルス感染症の症状イメージ

https://twitter.com/kosuke_yasukawa

さて、最初のイラストに戻りますが、一部の方が抱く新型コロナ感染症イメージ?にある軽症は、実際は無症状と同義のような気もします。また中等症イメージ「息苦しさはでそう」は、実際の現場の軽症に相当するようです。

一部のイメージにある重症イメージ「入院は必要かもしれない」というのは、現場の中等症のイメージに近いようです。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引きでは、「中等症は入院して加療を行う」とあります。 日本の中等症Ⅱはアメリカの重症に該当します。そう思うと、医師が持つイメージの「人工呼吸器は要らないが、肺炎はひろがっていて、多くの人にとって今までに一番苦しい」というのが、実際の現場のイメージであるのがうかがえます。

日本の重症は「集中治療室に入室または人工呼吸器が必要」な臨床状態となります。人工呼吸器や体外式膜型人工肺(ECMO)を使用します。

安川教授は、BuzzFeed Newsの取材で、医師のイメージである「助からないかもしれない」という表現について、「本当に『助からないかもしれない』ので、そのような表現をしています。厳しい表現かもしれませんが、非医療従事者に分かってもらうにはどのような表現にしたら良いのか考え使用しました。ここまでの新型コロナ感染症になると致死率は非常に高いです。人工呼吸器を治療を要した人のうち約2割が、ECMOが必要だった人の約3割以上が亡くなるという日本のデータもあります。」と言われています。

まとめ:コロナ≠風邪。重症化もあり得る。ワクチン接種で重症化を防ごう。

新型コロナウイルス感染症は感染拡大が続いています。最近はデルタ株の流行が拡大しており、三密(密集・密閉・密接)ではなく、一つの密でも感染する可能性も言われています。

ワクチンを2回接種して2週間以上経過した方の感染(ブレイクスルー感染)も確認されており、ワクチンを打ったからコロナにかからない、というわけではありません。

ワクチンを打つことで、上述の「重症」は防げる可能性があります。

もし、重篤なアレルギーの既往歴以外でワクチンの接種をためらっている方がいらっしゃる場合は、コロナ感染で重症になるリスクを防ぐためにも、ワクチン接種を積極的に検討していただけたらと思います。

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