2021年5月21日、モデルナ社のワクチンとアストラゼネカ社のワクチンが特例承認されました。職場でも冷凍庫が搬入されたり搬入日のお知らせがあったり、着々と準備が進んでいたのでぼちぼち承認かなぁと思っていました。
今回2種類のワクチンが特例承認されました。
- COVID-19ワクチンモデルナ筋注(武田薬品工業・モデルナ)
- バキスゼブリア筋注(アストラゼネカ)
第21回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会(令和3年5月21日)の資料(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000192554_00009.html)をもとに、今回承認されたワクチンのうち、大規模接種会場で使用される予定のモデルナワクチンについて、既存のファイザーワクチン(コミナティ筋注)との違いを比較しました。
ワクチンの効果と投与方法
厚生労働省が作成している、ワクチンの説明書の記載事項を比較しました。
ファイザー社製 新型コロナワクチン | モデルナ社製 新型コロナワクチン | |
販売名 ワクチン種類 | コミナティ®筋注 コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2) | COVID-19ワクチンモデルナ筋注® コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2) |
保存条件・期間 | -90℃~-60℃(6か月) -25~-15℃で最長14日間 冷蔵庫(2-8℃)で5日以内に使用する 希釈後は2-30℃で6時間以内に使用する | -20℃±5℃(6か月) 解凍後、遮光して2-8℃で最長30日間 解凍後、遮光して8-25℃で最長12時間 |
効能・効果 | SARS-CoV-2による感染症の予防 (発症予防効果:約95%と報告) | SARS-CoV-2による感染症の予防 (発症予防効果:約94%と報告) |
接種回数・間隔 | 2回(通常3週間の間隔)※筋肉内に接種 | 2回(通常4週間の間隔)※筋肉内に接種 |
接種対象 | 12歳以上(12歳未満の人に対する有効性・安全性は不明) ⭐︎2021/6/1から接種対象が12歳以上になりました。 | 18歳以上(18歳未満の人に対する有効性・安全性は不明) |
接種量 | 1回0.3mLを合計2回 | 1回0.5mLを合計2回 |
モデルナのワクチンはファイザー社のワクチンと同じく、mRNAワクチンです。被接種者の筋肉内に注射し、ウイルスのスパイクタンパク質のトゲの設計図を入れることで、抗原を作成し、免疫反応を促すものとなります。
なので、ファイザー社のワクチンと同様な効果、副反応になるのではないかと思います。接種間隔はファイザー社のワクチンは3週間間隔、モデルナ社のワクチンは4週間間隔と、接種間隔の差があります。また、12歳から17歳も接種できるのは、ファイザー社のワクチンとなります。今後、ワクチンの接種年齢は海外のデータを参考に引き下げられると思います。✳︎2021/6/1からファイザー社のワクチンの接種対象年齢が12歳以上に引き下げられました。
予防接種を受けることができない人
予防接種を受けることができない人(非対象者)は、ファイザー社製とモデルナ社製との違いはありませんでした。
非対象者は次の通りです。
- 明らかに発熱している人(37.5℃以上 平熱によっては37.5℃未満も考慮)
- 重い急性疾患にかかっている人
- 本ワクチンの成分に対し重度の過敏症の既往歴のある人(アナフィラキシー等)
- 上記以外で、予防接種を受けることが不適当な状態にある人
予防接種を受けるに当たり注意が必要な人
予防接種を受けるに当たり注意が必要な人は、ファイザー社製とモデルナ社製との違いはありませんでした。
- 抗凝固療法を受けている人、血小板減少症または凝固障害のある人
- 過去に免疫不全の診断を受けた人、近親者に先天性免疫不全症の方がいる人
- 心臓、腎臓、肝臓、血液疾患や発育障害などの基礎疾患のある人
- 過去に予防接種を受けて、接種後 2 日以内に発熱や全身性の発疹などのアレルギーが疑われる症状がでた人
- 過去にけいれんを起こしたことがある人
- 本ワクチンの成分に対して、アレルギーが起こるおそれがある人
妊娠中又は妊娠している可能性がある人、授乳されている人は接種前の診察時に必ず医師へ伝えてください、とあります。基本的にワクチン接種は問題ないと思いますが、添付文書に「予防接種上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ接種すること」とあるので、接種注意の項目に該当する方はかかりつけ医に相談してもいいかもしれません。
また、これまでのワクチンで使用されたことのない添加剤が含まれているので、過去に薬剤で過敏症やアレルギーを起こしたことのある人は接種前の診察時に必ず医師に伝える必要があります。
接種を受けた後の注意点
接種を受けた後の注意点は、ファイザー社製とモデルナ社製との違いはありませんでした。注意点は次の通りです。
- 接種後15分以上(過去にアナフィラキシーを含む重いアレルギー症状を起こしたことがある方や気分が悪くなったり、失神等を起こしたことがある方は30分以上)接種を受けた施設で待機。体調異常時は速やかに医師に連絡。(急に起こる副反応に対応できる。)
- 注射部位は清潔に保つようにし、注射部分はこすらない(入浴は可能)
- 激しい運動や過度の飲酒は控える
ワクチン接種の副反応
副反応はファイザー社製とモデルナ社製は若干異なるようです。
高齢者向けリーフレットに、接種後、数日以内に現れる可能性がある症状として、次の記載があります。
発現割合 | コミナティ(ファイザー社)症状 | モデルナ(武田薬品)症状 |
50%以上 | 接種部位の痛み、疲労、頭痛 | 接種部位の痛み、疲労、頭痛、筋肉痛 |
10-50% | 筋肉痛、悪寒、関節痛、下痢、発熱、接種部位の腫れ | 関節痛、悪寒、吐き気・嘔吐、リンパ節症、発熱、接種部位の腫れ、発赤・紅斑 |
1-10% | 吐き気、嘔吐 | 接種後7日目以降の接種部位の痛みなど(接種部位の痛みや腫れ、紅斑) |
接種部位の痛み、疲労、頭痛はどちらも50%以上の高い確率で発生するので、起こると予想しているほうがよいと思います。私の実体験では、ファイザー社製の1回目接種時は若干の発熱と接種翌日の接種部位の痛みでしたが、2回目接種時は接種部位反応としては、痛み、熱感、赤み、全身反応としては、頭痛、倦怠感、悪寒、リンパ節の違和感がありました。
表を比較すると、筋肉痛、吐き気、リンパ節症、発赤・紅斑、接種後7日目以降の接種部位の痛みは、モデルナ社製の方が多くみられるようです。
モデルナ社製のワクチン接種後の副反応で「モデルナ・アーム」と呼ばれているものがあります。「モデルナ・アーム」で検索すると、国際医療福祉大学病院内科学予防医学センター教授の石英一郎先生の言葉として「接種から5~9日後に注射部位に赤い発疹が生じる副反応で、モデルナ社製ワクチン接種者の95%に起きています。発疹は腕だけではなく、全身に生じることもあるが、3~4日で消失して健康に害はないとされています。」とありました。
承認された3種類のワクチンの添付文書に記載されている副反応は次の通りです。
ワクチン | ファイザーワクチン (コミナティ筋注) | モデルナワクチン (COVID-19モデルナ筋注) | アストラゼネカワクチン (バキスゼブリア筋注) |
データ元 | 臨床試験データ | 臨床試験データ | 臨床試験データ |
局所症状 (注射部位) | 【5%以上】疼痛(84.3%)、 腫脹(10.6%)、発赤、紅斑 【1%未満】そう痒感、熱感、 内出血、浮腫 | 【5%以上】 疼痛(92.0%)、腫脹(14.8%)、 発赤・紅斑(10.1%) 【1%~5%未満】 遅発性反応(疼痛、腫脹、紅斑等) ※接種7日目以降に認められることあり 【1%未満】そう痒感、蕁麻疹 | 【5%以上】圧痛(62.9%)、 疼痛(54.7%)、熱感(17.9%)、 挫傷(17.9%)、そう痒感(13.1%) 【1%~5%未満】腫脹、発赤、硬結 |
精神神経系 | 【5%以上】頭痛(55.1%) 【1%未満】浮動性めまい、 嗜眠、不眠症、顔面麻痺 | 【5%以上】頭痛(64.6%) 【頻度不明】急性末梢性顔面神経麻痺 | 【5%以上】頭痛(51.1%) 【1%未満】浮動性めまい、傾眠 |
消化器 | 【5%以上】下痢(15.5%) 【1%~5%未満】嘔吐、悪心 【1%未満】食欲減退 | 【5%以上】悪心・嘔吐(22.8%) | 【5%以上】悪心(20.5%) 【1%~5%未満】嘔吐 【1%未満】下痢、腹痛 |
筋・骨格系 | 【5%以上】筋肉痛(37.9%)、 関節痛(23.7%) 【1%未満】口腔咽頭痛、鼻閉 | 【5%以上】筋肉痛(61.5%)、 関節痛(46.3%) | 【5%以上】筋肉痛(43.5%)、 関節痛(26.6%) 【1%~5%未満】四肢痛 |
皮膚 | 【1%未満】多汗症、発疹、寝汗 | 【1%未満】発疹 | 【1%未満】多汗症、そう痒感、発疹、 【0.1%未満】蕁麻疹 |
血液 | 【1%未満】リンパ節症 | 【5%以上】リンパ節症(19.8%) | 【1%未満】リンパ節症 |
その他 | 【5%以上】疲労(62.9%)、 悪寒(32.4%)、発熱(14.8%) 【1%~5%未満】疼痛 【1%未満】倦怠感、無力症、 インフルエンザ様症状 | 【5%以上】疲労(70.0%)、 悪寒(45.5%)、発熱(15.7%) 【1%未満】顔面腫脹 | 【5%以上】疲労(51.6%)、 倦怠感(43.8%)、発熱感(33.5%)、 悪寒(31.0%)、発熱 【1%~5%未満】無力症 【1%未満】インフルエンザ様疾患 【頻度不明】血管性浮腫 |
アナフィラキシーの頻度
ファイザー社製ワクチンとモデルナ社製のワクチンのアナフィラキシーの頻度について、厚労省の資料に次の表が掲載されていました(2021年1月18日までのデータ)。
投与回数 | アナフィラキシー発生件数 | アナフィラキシー発生率 | |
ファイザー製 | 9,943,247 | 47 | 4.7/1,000,000 (100万回中4.7例) |
モデルナ製 | 7,581,429 | 19 | 2.5/1,000,000 (100万回中2.5例) |
アナフィラキシー発生例の特徴は次の通りです。
ファイザー製(47例) | モデルナ製(19例) | |
年齢中央値(range) | 39歳(27-63) | 41歳(24-63) |
女性(%) | 44名(94%) | 19名(100%) |
発症までの時間中央値(range:分) | 10分(<1-1140〔19時間〕) | 10分(<1-45) |
15分以内の発症件数(%) | 34件(76%) | 16件(84%) |
30分以内の発症件数(%) | 40件(89%) | 17件(89%) |
アレルギーの既往(%) | 36件(77%) | 16件(84%) |
アナフィラキシーの既往(%) | 16例(34%) | 5例(26%) |
接種回数(1回目、2回目、不明) | 37,4,6 | 17,1,1 |
アナフィラキシーの頻度については、臨床試験上のデータでは、ファイザー製(100万回中4.7件)よりモデルナ製(100万回中2.5件)の方が頻度が少ないようです。
2月17日から5月2日までのファイザー社製のワクチン接種によるアナフィラキシー報告は664件/3,823,386回接種(100万回中173件)で、うち、ブライトン分類に基づき評価された件数(間違いなくアナフィラキシーと診断されるもの)は107件/3,823,386回接種(100万回中28件)でした。
海外データでは100万回中4.7件でしたが、日本データでは100万回中28件と、約6倍であるため、モデルナ製のワクチンでも実際の頻度は上がる可能性があります。
まとめ
以上、比較した結果をまとめました。
- 製品:どちらもmRNAワクチン。ファイザー社製は希釈が必要だが、モデルナ製は希釈不要。保管温度が異なる。安定性はモデルナ製ワクチンのほうが高い。
- 接種:ファイザー社製は12歳以上(2021/6/1〜)、モデルナ社製は18歳以上。接種間隔はファイザー社製が3週間、モデルナ社製は4週間
- 副反応:若干異なる。モデルナ社製は「モデルナ・アーム」と呼ばれる接種部位の接種後5~9日目に発生する局所反応がある。
- アナフィラキシー:臨床試験上ではモデルナ社製のほうが頻度が少ないが、実臨床になると増加する可能性がある。(ファイザー社製は海外データ、日本データと比較すると、発生率が6倍高い)
現在使用されているファイザー社製のワクチンと比較しても、そんなに大きな違いはなさそうです。モデルナ社製ワクチンの日本人への接種は臨床試験では150名しかありません。ファイザー社製のときの医療従事者先行接種調査と同様に、自衛隊員に接種する調査が予定されています。今回はほぼ同時期に始まるので、調査結果を見て接種とはいきませんが、8月頃にはデータがでていると思いますので、その結果を注目したいと思います。
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