新型コロナワクチン(ファイザー)12歳以上から接種可能に!接種効果と副反応を16歳以上の若年層と比較したデータを紹介します。

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2021年6月1日より、ファイザー社製の新型コロナワクチン(コミナティ筋注®)で12歳以上の接種が承認されました。これまで接種対象が16歳以上だったので、12歳以上となると中学生も接種対象となります。今回、特例承認にあたり使用された臨床試験データ(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000786332.pdf)から、12歳から15歳までの群と16歳から25歳までの群と比較したデータがあったので紹介します。

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臨床試験データ概要

12 歳以上の健康人を対象に、ファイザーワクチンの有効性及び安全性の検討を目的とした無作為化観察者盲検プラセボ対照並行群間比較試験が海外 6 カ国(米国、ドイツ、トルコ、ブラジル、アルゼンチン及び南アフリカ)、153 施設で実施されました。無作為化とは、ワクチン群とプラセボ(偽薬)群を意図せず2群に分けること、観察者盲検とは、ワクチンを吸い上げるスタッフ以外は、接種する医師等や接種される人を含め、ワクチンを打ったのか、プラセボを打ったのかわからなくすることで、先入観なく副反応を確認する手法です。

この試験に参加した12歳から15歳の対象者は、約2000人で、ワクチン群とプラセボ群が1:1に割り付けられたので、ワクチンは約1000人に接種されています。

ワクチンによる抗体価の確認は、意図なく選ばれたワクチン接種者280名のうち、2回目接種後に評価可能な中和抗体(コロナウイルスに対する抗体)評価結果が得られなかった人、かつ新型コロナウイルス感染歴がない人で比較されています。

ワクチンの有効性は、12歳~15歳のワクチンを打った人とプラセボを打った人のうち、2回目接種後7日までに新型コロナウイルス感染症になった人を除く集団と、新型コロナウイルス感染症の感染歴を問わない集団でそれぞれ解析されています。

ワクチンの安全性は12歳から15歳までの対象者のうち、1回以上ワクチンもしくはプラセボを接種された2260名(ワクチン群1131例、プラセボ群1129例)について解析されています。

12歳~15歳と16歳~26歳の中和抗体比較

今回、12歳以上を接種対象とするために、新型コロナウイルスに対する中和抗体の量を12歳~15歳と16歳~25歳で比較し、劣っていないこと(非劣性)の確認が行われました。非劣性の確認は2群を比較したとき、差が0.67を上回っていると劣っていないとなるようです。

12歳~15歳の190例と16歳~25歳の170例と比較した結果は次の通りです。抗体価の比は1.76なので、非劣性となりました。つまり、12歳~15歳でのワクチン効果としては、16歳以上でのワクチン効果と同等の効果が期待できます。

年齢(解析対象例数) 中和抗体価幾何平均値
[95%信頼区間]
幾何平均値の比(12~15 歳/16~25 歳)
[95%信頼区間]
12~15 歳(190 例)1239.5 [1095.5, 1402.5]1.76[1.47, 2.10]
16~25 歳(170 例)705.1 [ 621.4, 800.2]
2 回目接種後 1 カ月の血清中 SARS-CoV-2 中和抗体価(50%中和抗体価)(2 回接種評価可能免疫原性評価対象集団)

12歳~15歳のワクチン効果

12歳から15歳のワクチンの有効性(VE)は感染歴なしの集団と感染歴を問わない集団で解析されています。解析結果は次の通りです。

ワクチン効果 VE(%)は次の式で計算されます。

VE(%)=100×(1-被験者の追跡期間における1000人年あたりのCOVID-19 発症率のワクチン投与群とプラセボ投与群の比)

感染歴N(解析対象症例)COVID-19 確定例総追跡期間
(1000人年)

(追跡期間に
寄与した例数)
VE]
[95%信頼区間]
(%)
感染歴なしワクチン投与100500.1541001100.0
[75.3, 100.0]
感染歴なしプラセボ投与978160.147972
感染歴を問わないワクチン投与111900.1701109100.0
[78.1, 100.0]
感染歴を問わないプラセボ投与1110180.1631094
2 回目接種後 7 日以降の 12~15 歳の COVID-19 発症に対するワクチンの有効性

2回目接種7日後までのデータではありますが、ワクチン接種群でCOVID-19確定例がいなかったため、有効性は100%となっています。16歳以上のファイザー社ワクチンの有効性は95%だったので、有効性としては成人のデータに劣っていません。12歳から15歳でも効果がありそうです。

12歳~15歳のワクチン副反応

ワクチンの副反応は、本試験に参加し、投与群を割り付けられた2264例のうち、ワクチン群1127例、プラセボ群1127例における各回接種後7日間で、日誌から収集されています。

  • 局所反応:
    • 注射部位疼痛(1回目86.2%、2回目78.9%)
    • 発赤(1回目5.8%、2回目5.0%)
    • 腫脹(1回目6.9%、2回目4.9%)
  • 全身反応:
    • 発熱(1回目10.1%、2回目19.6%)
    • 疲労(1回目60.1%、2回目66.2%)
    • 頭痛(1回目55.3%、2回目53.9%)
    • 悪寒(1回目27.6%、2回目41.5%)
    • 嘔吐(1回目2.8%、2回目2.6%)
    • 下痢(1回目8.0%、2回目5.0%)
    • 筋肉痛(1回目24.1%、2回目32.4%)
    • 関節痛(1回目9.7%、2回目14.8%)

副反応の内容を見ると16歳以上の接種者と同じような項目となります。臨床試験に参加し、ワクチンを接種された12歳~15歳と16歳~25歳の副反応を1回目、2回目で比較した表は次の通りです。副反応の出現数の下側の数値はGrade3以上(重い副作用)の人数と割合です。(厚労省の資料ではプラセボ群についても比較していますが、ワクチン群のみ掲載しています。)

12歳~15歳
副反応出現数(%)
【1回目】
16歳~25歳
副反応出現数(%)
【1回目】
12歳~15歳
副反応出現数(%)
【2回目】
16歳~25歳
副反応出現数(%)
【2回目】
接種者の人数N=1127N=531N=1097N=488
注射部位疼痛971(86.2)
11(1.0)
442(83.4)
12(2.3)
866(78.9)
7(0.6)
378(77.5)
7(1.4)
発赤65(5.8)
1(1.0)
34(6.4)
2(0.4)
55(5.0)
0
28(5.7)
1(0.2)
腫脹78(6.9)
0
44(8.3)
1(0.2)
54(4.9)
0
33(6.8)
0
発熱 38.0℃以上
   39.0℃以上
114(10.1)
11(1.0)
39(7.3)
3(0.6)
215(19.6)
25(2.3)
84(17.2)
7(1.4)
疲労677(60.1)
15(1.3)
318(59.9)
11(2.1)
726(66.2)
26(2.4)
320(65.6)
23(4.7)
頭痛623(55.3)
11(1.0)
286(53.9)
11(2.1)
708(64.5)
22(2.0)
297(60.9)
21(4.3)
悪寒311(27.6)
5(0.4)
133(25.0)
5(0.9)
455(41.5)
20(1.8)
195(40.0)
12(2.5)
嘔吐31(2.8)
1(0.1)
9(1.7)
0
29(2.6)
0
13(2.7)
0
下痢90(8.0)
0
57(10.7)
0
65(5.0)
0
39(8.0)
2(0.4)
筋肉痛272(24.1)
2(0.2)
143(26.9)
5(0.9)
355(32.4)
6(0.5)
199(40.8)
9(1.8)
関節痛109(9.7)
1(0.1)
70(13.2)
3(0.6)
173(15.8)
4(0.4)
107(21.9)
4(0.8)
ワクチン各回接種後 7 日間における反応原性事象(反応原性解析対象集団)

注射部位疼痛は、どの年代もの1回目接種、2回目接種でいずれも80%近く発現しています。添付文書上での発現割合は84.3%とあるので、他の年代と比較して高すぎる、ということはなさそうです。

注射部位の発赤や腫脹の発現率は5%前後で、1回目、2回目であまり差はありません。

発熱は、1回目接種、2回目接種を比較すると、どの年代も2回目接種後で発現率2が倍近く上昇しています。医療従事者2万人データでの発熱の発現率(1回目接種後3%、2回目接種後38%)と比較すると、1回目接種後に発熱した割合は、若年層のほうが高いようです。また2回目接種後の発熱は臨床試験での発現率より高くなる可能性があります。

疲労は6割近く発現し、2回目接種後の方が発現率が高くなっています。医療従事者2万人データでの疲労(全身倦怠感)の出現率は(1回目接種後23%、2回目接種後70%)と比較すると、1回目接種後での疲労感は、若年層の方がでやすいのかもしれません。

頭痛は50%~60%近く出現しており、医療従事者2万人データ(1回目20%、2回目53%)と比較すると、1回目接種後の頭痛の発現率は他の年代と比較して高い可能性があります

悪寒は1回目接種後と2回目接種後を比較すると1.5倍ほど発現率が上昇しています。

筋肉痛、関節痛は、1回目接種より2回目接種の方が発現率が高くなっています。

12歳~15歳でのショック、アナフィラキシー

厚生労働省の資料では、「12歳~15歳の集団において、ショック、アナフィラキシーの発現は認められなかった。また疾患増強リスクを示唆する新たな情報も確認されていない。」とあります。

まとめ

今回対象が拡大した12歳から15歳へのファイザーワクチンの接種において、海外データでは、ワクチンの有効性は他の年代と比較して劣っておらず、同等の効果は得られそうです。

副反応については、1回目接種後の副反応で他の年代よりも発現率が高いのは発熱、疲労感、頭痛のようです。2回目接種後の副反応は他の年代と同程度のようです。

変異型のウイルスが流行し、若年層への感染が増えています。ワクチンを接種するリスクとベネフィットを考えると、ワクチンを接種することによるリスクよりベネフィットが高いことから、接種したほうがいいように思います。あなたやあなたのお子さんへの接種判断の参考となれば幸いです。

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